森博嗣の爽快な切り口が癖になる
著者の森博嗣はドラマになった小説「すべてがFになる (講談社文庫)」が有名な小説家です。前職が大学教授ということもあり、文章が簡潔で理路整然としています。
本書「集中力はいらない」は、現代社会で集中力が全ての物事をうまくやるための魔法のように扱われている状況について疑問を呈しています。
ただ、本書の「集中力はいらない」という題名からイメージされるような「集中力を高めることが本当に大事なのか?集中力ってそもそも何だろうか?実は、物事をなすのに集中力は必要ないのだ、今の現代社会に物申す!」…って感じでもないんですよね。
森博嗣の語り口はここでも変わらず、文章を淡々と書いています。
「集中力についてはですね。実はこういう考え方もできますよ」っていう雰囲気です。そしてその押し付けがましくない雰囲気が、私が著者の森博嗣の好きな部分です。
そもそも集中力って?
まず「集中力とは何だろうか?」という疑問から本書は始まります。
私は「集中力って何だろう?」なんて生きてきて一度も真剣に考えたこともなかったからスタートから興味津々でした。
話が進んでいくうちに、集中力が現在社会で褒め称えられるほどのものではなかった事が明らかにされます。
結局のところ、集中力とは作業のミスをしない事にフォーカスしている言葉でありロボット的な作業に適した行動だとわかります。
現代社会は機械やコンピューターがその作業を人間に変わってやるようになるため、実は今後の社会ではより人間的な思考、つまりアンチ集中力(本書では「分散」「発散」)の地位が上がるだろうという事です。
現代日本の集中力の強迫観念
今の日本人は集中力に関しての強迫観念を誰もが抱いています。
昔から、日本人は真面目に一つのことに取り組むことが美徳でした。
一つのことに集中することで、人生は成功できるという考えです。
そして、この考えが自分とは合わないで悩んでいる人もいるんじゃないでしょうか?
そんな人はぜひ本書を読んで「集中力」という束縛から解放されて欲しいと思います。こんな人はぜひ読んで欲しいです。
- いろんなことに挑戦したいと考えている人
- 一つのことに集中できない。それがコンプレックスの人
- すぐに飽きちゃう人
- リーダー的な職につく人
- 集中力に対して、常に良いものだと考えている人
本を読むことは、様々な視点を知ることができる簡単な方法です。
本書を読めば、どれだけ私たちが「集中」的な思考に囚われているかがわかり肩の力が抜けることで少し人生を生きやすくなると思います。
本書も一気に読む必要はありません。リラックスして読めます。「集中力」は必要ないのですから。
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